トカゲなる日々

劇団万国トカゲ博覧会の生態

中途退出

それでなくとも「席を立つ」奴というのは、単に「舞台がつまらないから、途中で出て行く」だけではなく、聞くところによると最近では常習犯となり、「あんな痛快なものはないよ」と、それを目的としはじめているらしい。(中略)「ふん」と、鼻でうそぶいてゆっくり立ち上がり(これで、「舞台がつまらないから立ったんだぞ」ということを周囲に知らしめ)、そのまま出て行くのでなく、一度、これもゆっくりあたりを見まわし(これで、「お前たちはどうなんだ」と暗に問いかけ、出来れば「だって、娘が出演しているんだからしょうがないじゃないの」という、周囲の言いわけがましい表情をじっくりと見てとり)、もう一度「ふん」(これは、舞台に対してではなく、にもかかわらず「席を立たない」周囲の客に向けてのものである)をやってから、悠々と出て行くのである。
ちょっと、やってみたくなるようなやり方ではないだろうか。もちろん、やってはいけないことであるし、私がそれを知りながら敢てここに紹介したのは、誰でもが、やろうとして出来ることではないからである。恐らく、この通りのことがこの通り出来るためには、少なくとも十年、劇場に通い続けることが必要であろう。


別役実「うらよみ演劇用語辞典」(2003)小学館 pp177-178


もうちょっと引っ張って引用しております。こんなクソ野郎もフォローしてあげる辺り、別役氏は心が優しいです。
私は芝居の途中で席を立ったことはありません。ついでに言うと寝たこともありません。更に言うと、途中で席を立たれたことはあります。観劇途中で具合が悪くなった方が1名、「R-18」の途中で足音高く席を立たれた方が1名。理由はお察し下さい
長編小説を途中で読みさす人やテレビドラマを途中で見るのを止める人と比べると、芝居の途中で席を立つ人は非常に少ないでしょう。これは映画も同じことで、YouTubeやニコ動の普及した昨今、わざわざ出掛けてまで観に来たものを途中で止めるなんて、もったいなくて出来ることではありません。
あと周りの迷惑になるというのもあります。「女子がほぼ裸の以下略」を観に来られたお客様で、恐らくライブハウスと似た様なものだと考えておられた方が「え、途中退出できないの?」と驚いておられました。映画館や劇場の客席が、例えばひとしくん人形の様に綺麗にボッシュートして、公演の最中でも他の人の邪魔にならずに退出できる様になれば、途中退席者数は若干増えるかもしれません。

別役氏の話の不心得者にとっては、観劇は特別なことではないのでしょう。劇場に通い続けて、観劇が当たり前のことだから、途中で席を立ってももったいなくも何ともないのです。中途退席者が居るのはある意味観劇文化が盛んな証拠であるとも言えます。
しかし芝居を作る側では中途退出者をとにかく出さない様に出さない様に、歌舞伎なら『豪勢な着物で席に座っているのがステータス』、ミステリなら『真犯人がわからない』、その他『可愛い女優が今にも脱ぎそう』等々、あの手この手で対策を講じる訳です。
そうすると、最初から最後まで席に座っていることにどれ程の意味があるんだろうと思います。もしも演劇が90分程度のパッケージで完結するという制約を免れるなら。もしも役者陣が観客に途中で退席されることを恐れないなら。もしも観客が最初から最後まで観なければならないなどと思わなければ。
観客の貧乏人根性(実に失礼な言い草ですが)を粉砕する様な、例えば24時間ぶっつづけで上演されるような演劇があった場合、観客はやはり異議苦情を申し立てるんでしょうか?新春ワイド時代劇が近いですかね。24時間テレビは単一演目ではないので何とも・・・・・・。ググったら既に色々あるみたいですがリンクは割愛。

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