トカゲなる日々

劇団万国トカゲ博覧会の生態

趣味がおよろしいことで

・・・趣味という言葉はもともと味覚の隠喩表現でね、グラシアンというスペインの思想家がbuen gustoと言ったのが最初だ。でもここで言う趣味は現在一般に使われている趣味の用法とは少し違うんだ」
「現在では、趣味というと好みのことを指すわよね。『蓼食う虫も好き好き」みたいな感じで。あと、ホビーの趣味かな」
「そうだね。でもグラシアンが言う趣味とはことのよしあしの直感的判断のことなんだよ」
「今の趣味の意味とはだいぶずれるわね」
「でも今でも言うだろ?『あの人は趣味が悪い』って」
「うん、言うけど」
「趣味が単なる好みの問題なら、それに良いも悪いもあるわけがない。ところが実際にはことのよしあしが関わっていることになる。古来から趣味の概念を巡って常に議論が為されているわけだけど、これを総括してバークという人は、趣味を見分けの能力だというふうに規定した。つまりことのよしあしを見分ける天分。・・・
森晶麿黒猫の遊歩あるいは美学講義」 2011年 早川書房 pp.120-121

芝居の趣味が良いとはどういうことでしょう?
個人的にはやたらに舞台中央で役者に台詞を叫ばせる様な大げさな演出は趣味が悪いと思いますが、それで吉本新喜劇を趣味が悪いと言うのは多分違うでしょう。コンテンポラリーダンスなどを取り入れた先鋭的な舞台を観て「俺はこのおもしろさがわかる」とうそぶくのも更に違うと思います。
つまり芝居の経験を積めば積むほど芝居上の様々な技術や味わいを鑑賞することができるけれども、それに選民意識が付随するから話がややこしいと。
選民意識など一度も持たずに居られるほど人間は高潔ではなく、ステータス感も趣味の楽しみ方の範疇ではあります。がしかし『古参が新参を閉め出す』というよくある現象はジャンルを衰退させることにつながりますし、芝居はあくまで嗜好品である以上、どれだけ観劇経験を積んだ人でも好き嫌いがあるのは当たり前です。
その辺の含みが色々あるからこそ、趣味という言葉の意味は良し悪しを指すことから、より広くマイルドで曖昧な方向に変容したのかもしれないなーなどと思ったり。

では本来の意味の趣味という言葉は必要かと言うと、これだけメディアが分化した現代では逆に必要な気もします。絵が好きな人は漫画や映画には通じていない様に見えて、その良し悪しについての勘どころは決してゼロではないでしょう。そういった広い意味での目利き具合を指す言葉は、受け手側なら「鑑賞眼」ですか。「センス」はちょっとなあ。個人的には「勘どころ」は気に入っています。英語で言うと「テイスト」ですか。趣味、はどうも使いづらい気がするなあ。
更に言うと全メディアの良し悪しを総合的に判断する、つまり趣味の良さ求められるのが演出家という役職ですが、全てに精通するのも無理な話。なら演出家は何をどうお勉強しておくのが良いんでしょうね。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://tokageexpo.blog.fc2.com/tb.php/272-f794832e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad