トカゲなる日々

劇団万国トカゲ博覧会の生態

走るのは苦手です

門井 (引用者註:御影公会堂についての評)この丸窓は、あと十センチ上でも下でもダメというくらい絶妙の位置にあると思います。この曲線性の余韻を嗅いだあとに、ふたたび直線に戻りまして、今度は階段状にダンダンダンと上から落としていって、終末に向かってデクレッシェンドしてくわけです。
万城目 すごい。
門井 デクレッシェンドしたものが最後にもとの高さに戻って、おしまい。起承転結がきれいにできていて、ストーリー性が高く、それでいて全体を見るとどこからどう見ても前衛的な建物である。
万城目 前衛です。でも前衛なのに落ち着きもあって、まわりの景色に溶け込んでますよね。ほどよくボロくて、汚れてるという言い方もできるかもしれませんが(笑)。
門井 さらにもうひとつアピールするとすれば、この地下の食堂です。
万城目 これはすばらしい。古き良き洋食グリルという雰囲気ですね。門井さんが注文したのはオムハヤシですか。
門井 はい。このデミグラスソースは十日間煮込んであるそうです。とろとろ熱々で、タマネギはシャキシャキ。オムライスも絶品ですね。万城目さんが召し上がったのは?
万城目 僕は海老フライにタンシチューの小鉢。
門井 この海老も旨そうですねえ、尾頭付きで。
万城目 こってりタルタルソースで、美味しいですよ。海老が二匹、タンシチューの中に大きいジャガイモが丸々一個、さらにその横にポテトサラダ(笑)、そして御飯、さらにパスタ。どんだけ炭水化物ばかり食わせんねん(笑)。
万城目 大阪の中央公会堂にも地下にやっぱり洋食屋さんがございまして。
門井 ありますね。あそこもオムライスが名物です。
万城目 このふたつの公会堂の共通性って、おもしろいんです。どちらも市民の寄付によって建てられている。大阪の公会堂や岩本栄之助という相場師の寄付。こちら御影公会堂は、嘉納治兵衛という酒造会社の社長さんが建設費の九割を負担している。
万城目学門井慶喜ぼくらの近代建築デラックス!」 文芸春秋 2015年(文庫版) pp.106-107


ちょっと待った。君らはいつ御飯を食べたのだ。そしていつ食べ終わったの?
他にも台湾は宮原眼科の下りでは、気付いたら門井氏が両手いっぱいにパイナップルケーキを抱えていたり。こういった観光案内(?)的な文章ではよくあることかもしれませんが、何だかポストモダン的で、ちょっと不意を打たれました。

いわずもがなですが、こういうのはマンガや映画なら簡単です。1コマ・1カット毎に場所を移動しながら登場人物の行動を追っていく、スピード感のある表現です。もちろん芝居でも可能です。
でも小説その他の文章ではあんまり見ない気がします。「どこそこに移動した」とかいう説明を入れると、どうしてもそこでブレーキがかかってしまうんですね。「パンタレオン大尉と女たち」とかはそこをクリアしようと工夫を凝らしてますが。きちんと説明しないと読者にはわからない、と作者が思ってしまうのかしら。
つまり表現手法にも得手不得手があるのねという当たり前の話。

「ぼくらの近代建築デラックス!」、大阪・京都・神戸の名建築が紹介されていて、文庫本片手に町に繰り出したくなる一冊です。関西在住の方は是非手に取ってみて下さい。あと門井氏は常に何か食べている訳ではありません。

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